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権八(ごんぱち)、殺害の顛末(てんまつ)

 平井権八が父の同僚を殺傷した原因は犬の喧嘩(けんか)からと言われています。

 ある時、城中で父正右衛門(しょうえもん)が同僚に「畜類(ちくるい)などを鍾愛(しょうあい)するのはよろしくない」と語ったことを聞いた助太夫は、自分の犬好きを暗(あん)に悪口したと思い立腹。そこで自分の犬をけしかけて正右衛門の犬と喧嘩させると、正右衛門の犬が負けて尾を尻の間に挟(はさ)んで逃げてしまいました。

鍾愛とは、非常にかわいがることです。
 助太夫は「犬猫などは飼い主に似る」と高言しましたが、還暦(かんれき)を過ぎて世間の苦楽を知っている正右衛門は事を荒立(あらだ)てず、「拙宅(せったく)の犬は手許不如意(てもと・ふにょい)のため、飼料も不十分であるし、かつは老齢(ろうれい)の拙者(せっしゃ)のことなれば、犬も勇気が失せるでござろう」と言い、退出の時刻になったからと他の同僚を促(うなが)して帰宅しました。
 この話を友達から聞いた権八は、その夜、助太夫の家に押し掛け、一刀(いっとう)の下(もと)に助太夫を仆(たお)したと伝えられています。

◎なお、殺害された父の同僚の名前は本庄助太夫のほかに須藤助太夫とも伝えられ、確かな事は分かりません。
 本庄助太夫の遺子兄弟が権八に返り討ちにあったという話もあります。

◎このお話と関係ありませんが、「犬が飼い主に似る」と「犬の喧嘩」の件は、当館の日本文学で公開されている巌谷小波(いわや・さざなみ)の『初午(はつうま)の太鼓(たいこ)《正字・旧かな》でも読む事ができます。


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