1998.03.08 館長 獨 澄旻(どく とうびん)当館が予想した以上に「底本の公開の依頼」がありますので、お知らせの「6.データの底本や対校本」では言葉が足らなかったと反省し、ここに新しく底本を原則公開しない理由をまとめてみました。
疑問・質問・意見を封じるためのものではありませんので、もし何か思うところがあればお聞かせください。以上のことをご理解のうえ、当館のデータをご利用ください。「底本が気になる」くらいの程度あれば、申し訳ありませんが、我慢してくださいとしか言えません。
- 本当に底本を知る必要がありますか。
楽しむために読むのであれば、特に底本の公開は必要がないと思います。また、その感動などの気持ちは著作者に帰するもので、出版社やデータ入力者などにあるとは思えません。同じ著作者の本またはデータを読みたいと思うことはあっても、同じ出版社の本またはデータを読みたいとはまずお考えにならないでしょう。
今までは図書館や書店で本を選択する時、当然のように出版社の名前を知ることができますが、その時の出版社に相当するのがデータの提供元である「私立PDD図書館」なのです。文庫本で『坊っちゃん』を購入するとしましょう。その時、底本を知ろうとなさいますか。もし底本が印刷されていなければ、購入を断念なさいますか、出版社へ問い合せなさいますか。- 研究などのために利用する場合、その方のお持ちの書籍が正資料つまり底本でしょう。
当館のデータは補助または参考資料程度とするべきです。また、ここに記載しなくても誰一人として当館のデータのみで研究する方はいないと確信しています。- しかし、研究などで手持ちの資料と異なった場合、無視することは出来ないと思います。
この場合には当館の管理番号を指定していただければ問い合せに応じますので気軽にメールしてください。
- 非公開理由と直接関係ありませんが、その時に逆にそちらの資料名をお聞きする場合があります。また、同じ箇所に対する問い合せがあれば、問い合せた方のみにその資料名をお知らせする場合もあります。
- 入力からの問題もあります。
パソコン通信時代、当館が産声を上げた時に、場所の離れた複数の人たちで分割入力することを想定しました。つまり、同じ底本を揃えて入力することはできない、と判断したのです。章立てで入力担当を決め、それぞれの手持ちの本、つまり底本となるわけですが、で入力する。その後、メールで送信し合い、チェック担当の章をチェックする。これでは、底本と対校本との区別はなくなってしまいます。場合によって一冊の本がある章によっては一度も参照されないことが発生します。
つまり、底本の意識はなくなる、少なくても私立PDD図書館では必要ないと判断しました。
- (*3)現在、離れたスタッフと協力して入力を開始しています。(/*3)
(*3)1998.09.23 更新- 入力された内容にも問題があります。
原書(底本という言葉を敢えて使用しません)の1行の文字数と、当館のデータの1行の文字数が同じとは限りません。
原書で「々」・「ゝ」・「ヽ」などの文字が使用されていても、1行の文字数の関係から当館で改行が入ってしまうとプログラムで自動的にその前の文字に置き換えられてしまいます。つまり、当館のデータでは行頭に「々」・「ゝ」・「ヽ」などが存在することはありません。
逆に、原書で改行を挟んで同じ文字が使用されている場合、適宜(てきぎ)「々」・「ゝ」・「ヽ」などに変換して入力しています。また、繰り返しを現わす「く」も実際に繰り返して入力しています。
文字コードに存在しない文字も当然、カタカナなどに変換しています(一番苦労しています)。
読み・ルビは、当館で多少の増減を行っている場合もあります。その他、傍点などの問題もあります。
つまり、底本と同じと言うことはできない、という事です。同じと言うためにはスキャナで取り込んだデータということになってしまいます。しかし、画像とコード化されたデータでは利用価値がまったく違います。- 著作権問題も気にしています。
TVで報道されていたことですが、外務省が、公文書として公開している朝鮮人強制連行の文書にたいして著作権を主張し、出版を禁じたそうです。まったく、著作権の乱用としか思えません。法律は著作者とその家族の生活の保証のためだった筈ですが、憲法で保障されている表現の自由の制限に使われています。
ですから、出版社の名前を付けて公開することは、将来、出版社から訴えられることを想定して、原則非公開としています。
また、入力に使用した底本以外にチェック用に対校本を別に使用して、データから元の出版社の独自性の排除、または汎用性の抽出を行っています。つまり、出版社が独自に挿入したルビや段落・改行などを使用したと訴えられないよう、用心しているという事です。
どうしても底本を気になさるのなら、出版社が販売しているデータをご利用ください。それがあなたの望んでいるデータのはずです。ま、当館は「ブランド」に対する「無印良品」とでもご理解ください。
少なくても、注釈の追加などの加工が出来ること、その再配布が出来ることは、市販データより優っていると自負しています。