薬師十二神将(じんしょう)の一神で、伐折羅大将・金剛(こんごう)大将とも呼ばれます。
勢至菩薩(せいしぼさつ)を本地(ほんじ)とする丑(うし)の刻(午前2時頃)の守護神で、七億の夜叉(やしゃ)をひきつれ、仏法を守護するという夜叉王です。その姿は一般的に、頭上に狗頭(くとう)をいただき、忿怒(ふんぬ)の相(そう)を表しています。左手は腰を押え、右手に剣を持っています。「伐折羅」は「バザラ」とも読み、ほかに跋折羅・跛折羅・伐闍羅の表記や、縛日羅(ばじら)・和耆羅(わきら)の呼び方もあります。
「バサラ」は梵語(ぼんご)(サンスクリット)の「vajra」で、意味は異なりますが金剛や金剛杵(しょ)とも訳されます。金剛はダイアモンドのことで、右手に持つ剣が金剛杵なのです。
そのお姿があまりにも際立(きわだ)って異様だったので、鎌倉末期ころから奇(き)をてらい華美をつくす振る舞いや派手(はで)な姿をする伊達者(だてもの)も「ばさら(婆娑羅・婆沙羅・婆佐羅・時勢粧)」と呼ばれるようになりました。
十二神将 刻(とき) 本地(ほんじ) 1 宮毘羅(くびら) 子神(23〜 1) 弥勒菩薩(みろくぼさつ) 2 伐折羅(ばさら) 丑神( 1〜 3) 勢至菩薩(せいしぼさつ) 3 迷企羅(めきら) 寅神( 3〜 5) 阿弥陀如来(あみだにょらい) 4 安底羅(あんちら) 卯神( 5〜 7) 観音菩薩(かんのんぼさつ) 5 アジ羅(あじら) 辰神( 7〜 9) 如意輪観音(にょいりんかんのん) 6 珊底羅(さんちら) 巳神( 9〜11) 虚無蔵菩薩(こむぞうぼさつ) 7 因陀羅(いんだら) 午神(11〜13) 地蔵菩薩(じぞうぼさつ) 8 波夷羅(はいら) 未神(13〜15) 文殊菩薩(もんじゅぼさつ) 9 摩虎羅(まこら) 申神(15〜17) 大威徳明王(だいいとくみょうおう) 10 真達羅(しんだら) 酉神(17〜19) 普賢菩薩(ふげんぼさつ) 11 招杜羅(しょうとら) 戌神(19〜21) 大日如来(だいにちにょらい) 12 毘羯羅(びから) 亥神(21〜23) 釈迦如来(しゃかにょらい)
足利尊氏(あしかが・たかうじ)に従い初期の室町幕府に重きをなした佐々木高氏(たかうじ)は『太平記(たいへいき)』で「ばさら大名」として描かれています。右の十二神将の表は一般的なもので、切手画像の伐折羅大将がある新薬師寺では、伐折羅大将の本地は阿弥陀如来となっています。
そのため寺伝尊名と異なり、国宝指定名称では迷企羅大将となってしまいました。「改たむるに憚(はばか)ることなかれ」なのですが……。
なお、宮毘羅大将は金毘羅(こんぴら)さまとしても親しまれています。手元の本には全身像や向きと光りの指し方が違う顔の拡大の写真が載っていますが、著作権の関係でお見せできません(左手を腰に当ててはいません)。国宝なのに……、国宝のあり方をもう一度考えてみませんか。
切手・カード関連の索引に戻る |